EUと日本
政治関係
日本とEUは、多くの共通の利益を共有しており、国際舞台で緊密に協力しています
日・EU政治関係
拡大するパートナーシップ
高度な先進工業民主主義を有する日本とEUは、多くの共通の利益を共有しており、国連、世界貿易機関(WTO)、G7、G20といった舞台で緊密に協力しています。近年、パートナーシップの範囲は拡大しており、1970年代から80年代にかけて人々の関心を集めた通商問題をはるかに超える広がりを見せています。基本的価値を共有しながら、日本とEUは、2001年に戦略的パートナーシップを確立しました。また、日・EU首脳協議は、1991年から毎年開催しています。
日本とEUは、その関係において重要な一里塚となる2つの新しい協定を締結しました。
- 戦略的パートナーシップ協定は、法的拘束力を有する協定で、政治対話と政策協力のみならず、環境・気候変動、開発政策、災害救助、安全保障政策を含む地域的・世界的な課題に関する協力を視野に入れています。
- 経済連携協定(EPA)は、日・EU双方の成長を促進するものです。
日本とEUは、環境、情報社会、サイバー・宇宙問題、科学技術、貿易、金融サービス、産業政策といったさまざまな政策分野でも定期対話を続けています。さらに、日本とEUは、人権に関する対話を定期的に持ち、国連人権理事会や国連総会第3委員会のようなフォーラムを通じて協力しています。
このような多様な分野における実際的な協力は、潜在的な問題を解決するのに役立ち、国際基準の確立に貢献しています。
日・EU政治関係の歩み
1974年7月、当時の欧州共同体(EC)が、その行政執行機関であるEC委員会の外交使節として日本に駐日EC委員会代表部を開設しました。70年代から80年代にかけて、日本とEUの関心は、貿易不均衡の是正に集中していましたが、同時に、産業協力と投資の拡大も焦点の一つであり、1987年に日・EC産業協力センター が東京に設置されました。また、学者、研究者、ジャーナリスト間のさらなる交流が促進されました。
90年代に入り、一連のEU条約によって欧州がより深化した経済・政治統合を推し進めていくことが明らかになり、日欧それぞれの政策立案者達が、大規模な経済と同じ目的を持ち、成熟した民主主義を有する両者のより緊密なパートナーシップが、日本とEUのみではなく世界全体のためになると認識していったことで、日・EUの結びつきは強化されました。
2009年に発効したリスボン条約によって、EUとしての外交機関である欧州対外行動庁が設立されました。これによって、EUは日本と、ますます多くの政治対話を持つとともに、安全保障政策に関する初の定期協議を開催することとなりました。1974年には、ECの行政執行機関の代表部だったものが、今日、日本とさらに広範な、より戦略的に重要な関係構築を志す、EUそのものの代表部となったのです。
「 駐日EU代表部開設40周年」『EU MAG』 2014/7号 特集
EUのウクライナ支援
欧州連合(EU)およびEU加盟27カ国は、ウクライナに対するかつてない支援において、今もなお断固として結束しています。
目下の戦争は、欧州市民に相応の経済的・人道的負担を強いているにもかかわらず、EUのウクライナに対する連帯は揺るぎません。独立主権国家としての生存をかけた戦いにおけるウクライナの勝利を確実にするために共に取り組む中、われわれは、日本のウクライナに対する揺るぎない多大な支援とEUに対する支持に感謝しています。
ウクライナ支援は、何よりもまず同国が侵攻に打ち勝つように支援することですが、和平に向けた過程やウクライナ復興支援のあり方にも関わります。プーチンの野蛮で違法な侵略戦争に共に立ち向かうことは、引き続きウクライナのニーズに応えロシアの責任を追及していく中で、今後さらに一層重要です。
- ウクライナに対する違法な侵略戦争を開始することで、プーチンはウクライナの破壊と欧州の不安定化を図るだけでなく、国際法や特に国連憲章にあからさまに違反しています。このことは、日本や欧州にとって極めて重要な国際安全保障上の利益に深刻な影響を与えるなど、全世界の平和と安定を脅かしています
- ロシアによる違法な戦争の開始以降、われわれは、日本などのパートナーと足並みを揃えて、ロシアおよびその軍隊や経済に対して大規模な制裁を科すとともに、同国を国際的に孤立させることに取り組んできました
- EUはまた、エネルギー供給を多様化し、ロシア産化石燃料への依存を段階的に撤廃するため、電撃的な速さでエネルギー安全保障に関する措置を講じました。ロシアからの石炭や海上輸送される原油の輸入を禁止し、ロシア産ガスの購入も大幅に減少させました。同時に、再生可能エネルギーやエネルギー効率に投資してエネルギー転換を加速することで、EUは自らの強靭性を高めてきました。さらにEUは、ロシアの侵略戦争に鑑み、ウクライナのエネルギー部門を支援する上で、日本やその他の主要7カ国(G7)各国に他の有志国を加えた「G7+(プラス)」枠組みのパートナーと緊密に連携しています
- ウクライナ自体を支援するため、侵略戦争開始以降、EUおよびEU加盟国は総額13.2兆円[1]を超える財政・軍事・人道・難民支援を提供し、また定期的に増額してきました。これには、ウクライナの安定的な国家運営のための財源を確保する目的で月次で支払われた、前例のない2.9兆円 の財政支援も含まれます
EUおよび EU加盟国による集団的なウクライナ支援の例
- 6.9兆円を超える財政・予算支援および人道・緊急支援。こうした支援は、戦場でのウクライナの成功を確実にする軍事支援と同様に重要であり、同国が賃金や年金の支払いを継続し、病院や学校、移住者用住宅など必要不可欠な公共サービスを維持することを可能にするとともに、マクロ経済の安定化や破壊された重要インフラの復旧に役立っています。その内容は以下の通り
- 1.3兆円のウクライナへの財政支援(2023年、支払い済み)
- 4兆円の緊急マクロ財政支援および2.9兆円の予算支援(2023年)
- 総額1.9兆円に上る供与、融資および保証金の形でのEU加盟各国による直接的な財政支援
- 4,146億円 のEU予算による保証が付いた欧州投資銀行(EIB)および欧州復興開発銀行(EBRD)からの融資
- 1,256億円相当の人道援助、緊急支援および危機対応。これには5,500台以上の発電機や学校再建資金159億円が含まれる
- 1,914億円のウクライナの強靭化・改革支援 に関する二者間協力
- 98,000トン超の物的支援。これは金額では1,269億円に相当し、35カ国が参加し、EUが調整する「EU市民保護メカニズム」を通じた提供
- 3,000人以上のウクライナ人患者の医療搬送。EUが調整し、欧州各地の病院で専門医療を提供
- 1,595億円のウクライナの迅速な復興に向けた追加支援。2023年2月のEU・ウクライナ首脳協議における公約の一部
- 646億円のEU、EU加盟国およびその他パートナーによる「ウクライナ・エネルギー支援基金」への出資。エネルギー共同体が設置した同基金は、ロシアの攻撃で損傷したウクライナの重要エネルギーインフラ修復のための財政支援を提供し、同国のエネルギー部門の機能の維持を確保しています
- 4.5兆円を超える軍事支援。同支援は今なお増額が続き、弾薬から防空システム、戦車「レオパルト」、戦闘機まで幅広い支援を提供。これにはEU加盟国による二国間での直接的な物資提供に加え、前例のない 「欧州平和ファシリティー」からの9,727億円の拠出を含みます
- ウクライナへの弾薬の提供についてEUは、2024年初頭までに最大で100万発の火器弾薬の共同調達・供与に3,123億円、またEU防衛産業における弾薬の生産能力の緊急的な拡大に追加で796億円を拠出
- EUは現在、ウクライナ軍への最大の軍事訓練提供者であり、これまでに39,000人以上の同軍関係者がEU「軍事支援ミッション」の下で訓練を受けました。さらに、ロシア軍による一時占領後に解放されたウクライナ領土の地雷除去を支援するために、175億円 を追加拠出
- 2022年2月以降にEU加盟国に逃れてきたウクライナ難民の支援にEU予算から最大で2.7兆円を拠出
- EU域内で一時庇護登録を求める難民は4百万人近くに上り、その多くは女性や子ども、高齢者です。同登録を受けた者は、雇用や住居、医療、子どもの学校についてEU市民と同様の権利を有します。現在、ウクライナの子どもの約20%がEU域内に避難しています
- 1,595億円以上の「EU連帯レーン」への拠出。ウクライナ産の食料を世界に輸送し、ロシアの戦争により生じた食糧安全保障上の危機の解消を目的とする同制度は、これまでにウクライナが6,700万トン以上の農産品を輸出する一助となり、同国経済にとって大いに必要な収益を6.7兆円以上生み出してきました。また、4,000万トン以上の物品をウクライナ国内に届けることも可能にしました
- ウクライナからの輸出品については、一時的にEUの輸入関税を停止。最新のデータによれば、同国からの輸出は戦争開始前の水準を超えており、ウクライナの戦時経済に多大な恩恵をもたらしています
[1] 2024 年1月平均の欧州中央銀行(ECB)参考為替レートでユーロを円に換算
連結性と質の高いインフラに関する日・EUパートナーシップ
2019年9月、欧州連合(EU)と日本は、「持続可能な連結性および質の高いインフラに関するパートナーシップ」を締結しました
「持続可能な連結性および質の高いインフラに関する日・EUパートナーシップ 」は、EUが第三国と初めて締結した連結性に関するパートナーシップであり、2018年9月に欧州委員会とEU外務・安全保障政策上級代表が発表した「欧州とアジアをつなぐ – EU戦略の基礎要素」に関する共同コミュニケーション(政策文書)および2018年10月のEU理事会結論 に続くものです。連結性と持続可能なインフラに対するEUのアプローチは、欧州統合の成功のまさに根幹をなすものであり、連結性は持続可能で、包括的、かつルールに則ったものでなければならないという明確な価値と利益に基づいています。この欧州のアプローチは、社会と環境保護に関する高い基準を前提とするとともに、EUの域内市場に端を発しています。それは、個人の権利の尊重を保証しつつ、各国がより高い生活水準を実現することを可能にしています。日本との連結性パートナーシップは、このアプローチに基づいて連結性を促進するというEUと日本の共通の野心を確認するものです。
関連情報
持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日・EUパートナーシップ
グローバル・ゲートウェイ
グローバル・ゲートウェイは、欧州の国境を越えて社会的変革、公正なグリーン移行およびデジタルトランスフォーメーションに伴う国際投資ギャップの縮小に貢献すると同時に、競争力の強化とグローバル・サプライチェーンの安全性を高めることを目的とした、欧州連合(EU)の取り組みです。
グローバル・ゲートウェイは、信頼、持続可能性そして相互利益に基づいてデジタル、エネルギーおよび運輸分野におけるスマートでクリーンかつ安全な連携を促進し、世界中の医療、教育、および研究システムを強化する戦略です。同戦略を通じてEUはパートナー諸国に対し、国連の持続可能な開発目標およびパリ協定に沿う形で、敬意に満ちた質的かつ水平的・対等なパートナーシップを提供しつつ、変革的な大規模プロジェクトへの投資を提供します。
また、環境整備、規制枠組み、規範・基準、技術移転やノウハウの改善を通じて、ハードインフラへの投資を促します。極めて重要なのは、国際労働基準や人権を完全に尊重し、良好なガバナンスと透明性を確保しながらこれを行うことです。
これは、しばしば援助受け入れ国を債務の罠に陥れるような持続不可能な投資慣行に従っている他の主体とEUを区別するものであり、グローバル・ゲートウェイのプロジェクトは持続可能で質が高く、パートナー諸国とその国民に明確な付加価値をもたらすように設計されています。
グローバル・ゲートウェイは、2021年~2027年の間に、助成金、譲許的融資およびリスク回避のための民間部門の投資への保証を組み合わせて、全世界で最大3,000億ユーロの投資を行うことを目指しています。これは、全てのEU諸機関、EU加盟国とその開発金融機関や輸出信用機関、欧州投資銀行、欧州復興開発銀行および欧州の民間部門を動員する「チーム・ヨーロッパ」方式を通じて実施されます。
グローバル・ゲートウェイ戦略の詳細はこちら(英語)。