欧州委員会、EUの競争力を回復し、持続可能な繁栄を確保するための「羅針盤」を提案
<日本語仮抄訳>
欧州委員会は本日、自身の活動に戦略的かつ明確な枠組みを提供する、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の2期目における初めての主要な取り組みである「競争力コンパス(羅針盤)」を発表した。
同羅針盤は、欧州が将来の技術、サービスおよびクリーン製品を発明・製造・市場投入され、かつ初めて気候中立を確立する大陸となるための道筋を示すものである。
過去20年間にわたり欧州は、生産性の伸びの根強い格差により、他の主要経済圏に追いついていけなかった。欧州連合(EU)には、優秀で教育水準の高い労働力、資本、貯蓄、単一市場および独自の社会インフラなど、この傾向を逆転させるために必要なものが備わっている。
行動のための3つの中核分野:イノベーション、脱炭素化、安全保障
元欧州中央銀行総裁のマリオ・ドラギ氏が先般取りまとめた報告書は、競争力強化のための3つの変革の必要性を指摘し、本羅針盤は、これらの必須事項それぞれを現実のものとするためのアプローチと主要施策を示している:
- イノベーション・ギャップの解消: EUは、自身のイノベーション・エンジンを再燃しなければならない。われわれは、若い革新的なスタートアップ企業のための環境を整え、ディープテックに基づく高成長分野での産業界のリーダーシップを促し、既存企業や中小企業への技術普及を促進したいと考えている。この点に関して、欧州委員会は、主要分野における人工知能(AI)の開発と産業への導入を推進するため、「AIギガファクトリー」および「応用AI」と銘打った取り組みを提案する。また、先端材料、量子、バイオテクノロジー、ロボット工学および宇宙技術に関する行動計画も策定する。専用の「EUスタートアップ・スケールアップ戦略」は、新規企業の出現や拡大を妨げている障害に対処する。第28次法体系に関する提案を通じて会社法、倒産法、労働法および税法の関連事項を含め、適用される規則を簡素化し、事業が失敗した場合のコストを削減する。これにより、革新的な企業が欧州単一市場のどこで投資し事業を行っても、単一のルールから恩恵を受けることが可能になる。
- 脱炭素化と競争力のための共同行程表(ロードマップ): 本羅針盤は、エネルギー価格の高騰や変動を主要課題と特定し、クリーンかつ安価なエネルギーへのアクセスを促進するために取り組むべき分野を定めている。近く発表される「クリーン産業ディール(Clean Industrial Deal)」は、EUをエネルギー集約型産業を含む製造業にとって魅力的な場所とし、クリーン技術および新たな循環型ビジネスモデルを促進することを目的とした、脱炭素化に対する競争力主導のアプローチを打ち出す。「手頃なエネルギーに関する行動計画」は、エネルギー価格とコストの引き下げを促し、「産業脱炭素化加速法」は、転換期にある産業部門への加速的な許認可を拡大する。さらに、本羅針盤は、鉄鋼、金属、化学などのエネルギー集約型産業、すなわち欧州の製造構造の基幹産業でありながら、この移行において最も脆弱である産業に対するそれぞれに見合う行動計画を想定している。
- 過度の依存の減少と安全の強化:EUが多様化を図り、依存を減らすことができるかどうかは、効果的な連携関係の構築にかかっている。EUは既に世界最大かつ最も急速に拡大している貿易協定のネットワークを有しており、76カ国を対象とし、EUの貿易のほぼ半分を占めている。サプライチェーンの多様化と強化を続けるために本羅針盤は、世界各地から原材料、クリーンエネルギー、持続可能な輸送用燃料およびクリーン技術の供給を確保するため、新たなクリーン貿易・投資パートナーシップに言及している。EU域内市場においては、公共調達ルールの見直しにより、重要な分野や技術の公共調達において欧州優先の導入が可能となる。
原文はこちらをご覧ください(英語)。
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