インド太平洋地域における協力のためのEU戦略
<日本語仮訳>
欧州連合(EU)とその加盟国は長らく、アフリカの東海岸から太平洋諸島諸国までを包含するインド太平洋地域のパートナーたちと広範かつ包括的な関係を享受してきた。この地域における地政戦略上の不確実性が増す中で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの社会経済的復興が始まろうとする今日、インド太平洋地域は世界の注目の的となっている。
本日EU加盟国の27外務大臣が採択した「インド太平洋地域における協力のためのEU戦略」に関するEU理事会の結論は、同地域の高まる重要性へのEUの認識と、自身の役割を同地域のパートナーたちと協力して強化することへの決意を示すものだ。
インド太平洋地域は、世界の経済的かつ戦略的な重心である。世界の人口の60%を占め、世界の国内総生産(GDP)の60%を生み出し、現在の世界の経済成長の3分の2に貢献している。2030年までにインド太平洋地域は、世界経済に参加する24億人の新たな中流層の圧倒的大多数(90%)の住処となる。
インド太平洋地域における協力は、国連の持続可能な開発目標の達成を含む、国際社会の地球規模の取り組みを実行する上で不可欠だ。何年にもわたりEUは一貫して、開発協力や人道援助、気候変動・生物多様性の損失・汚染との闘い、および人権や航行の自由を含む国際法の順守への寄与といった形で同地域に相当な貢献をしてきた
それゆえEUはインド太平洋地域に大きな利害関係を有しており、その地域体制が今後も開かれたルールに基づくものであることに関心を持っている。しかしながら、インド太平洋地域の現状を変化させる力の働きは、高まる貿易や供給網への圧力および技術・政治・安全保障分野の緊張に加えて、激しい地政学的競争をもたらしている。人権の普遍性も脅かされている。世界の海上貿易の6割は同地域を通り、そのうち3分の1は南シナ海を通過する。インド太平洋地域の航路は自由かつ開かれた状態であり続けなければならない。
そのため、EUの外務大臣たちは、インド太平洋地域でのEUの戦略的重点、存在および行動を強化することとした。EUの働きかけと関与は、民主主義、法の支配、人権および国際法の促進に基づき、同地域の安定、安全、繁栄および持続可能な開発への貢献を目的とした、長期的な展望を原則とするものとなる。
同地域に対するこの新たなコミットメントは、EUとの協力を望む全てのパートナーを含むものだ。今般の戦略は意図的に実用的で柔軟性を持ち、多面的である。これによりEUは、パートナー国が共通の理念、価値または相互利益に基づいて一致点を見出すことのできる特定の政策分野に沿って、自身の協力体制を適合させたり構築したりすることが可能になる。
EUは特に、インド太平洋地域への自身の取り組みを既に公表しているパートナーと、同地域に対する関与を深めていく。
本日のEU理事会結論の採択により、EUは海洋ガバナンス・保健・研究と技術・安全保障と防衛・コネクティビティ(連結性)など多くの分野での協力をさらに強化し、気候変動のような地球規模の課題への対応に向けた連携を高めることが可能になる。
EUは、これら全ての分野において、特に新型コロナ危機の壊滅的な人的・経済的影響への対応、持続可能で包摂的なグリーンな社会経済的復興の担保、およびより強靭な保健体制の構築といった共通の任務において、全てのパートナーと協力していくことに期待している。