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欧州委員会、欧州市民のエネルギー料金を低減するための緊急市場介入策を提案

14.09.2022
ブリュッセル

EU News 180/2022

<日本語仮抄訳>

欧州委員会は、最近の急激な価格高騰に対処するため、欧州のエネルギー市場への緊急介入を提案した。ロシアが自国のエネルギー資源を武器化し続けていることが主因となり、欧州連合(EU)は、エネルギー需給の深刻なミスマッチの影響に直面している。欧州委員会は、この事態による欧州の家庭や企業への圧力の増大を緩和するため、消費者の電気料金の引き下げにつながる特例的な電力需要削減策と、エネルギー部門の余剰収入を最終消費者に再配分するための措置を提案し、この問題への取り組みをさらに進めることになった。これは、来るべき冬に備え、ガス貯蔵所の充てんやガス需要の削減に関するこれまでに合意された措置に続くものだ。欧州委員会はまた、市場運営者の流動性を向上させ、ガス価格を引き下げ、長期的な電力市場設計の改革を行うための取り組みも続けている。

価格高騰に対応するには、まず需要の抑制に取り組む。これは電気料金に影響を与え、市場全体の沈静化をもたらし得る。ガス火力発電が価格に大きな影響を与える、電力消費の最も高い時間帯を標的にするため、欧州委員会は、特定の価格ピーク時における電力消費を少なくとも5%削減する義務を提案した。EU加盟各国は、予想価格が最も高い10%の時間帯を特定し、そのピーク時の電力需要を削減することが義務となる。欧州委員会はまた、加盟各国が2023年3月31日まで電力需要全体を少なくとも10%削減することを目指すよう提案した。加盟国は、この需要削減を達成するために適切な手段を選択することができ、それらに金銭的補償を含めることも認める。ピーク時の需要削減により、冬季のガス消費量を1.2十億立方メートル削減することができる。エネルギー効率の向上は、欧州グリーン・ディールの下でEUが公約している気候変動への対応を達成するための重要な要素でもある。

欧州委員会はさらに、マージナル電源を使用しない発電事業者、すなわち、よりコストの高いマージナル電源を用いる発電事業者が設定する価格水準よりも低いコストで送電網に電力を供給している、再生可能エネルギー、原子力、褐炭などより低いコスト技術で発電する業者に対し、一時的な収益制限を提案した。これらの事業者は、比較的安定した操業コストの一方、受け取る卸売電力価格が高コストのガス発電で押し上げられたため、並外れて多額の収益を上げてきている。欧州委員会は、これらの事業者に対し、収入上限を一メガワット時あたり180ユーロに設定することを提案した。これにより発電事業者は、2030年および2050年のEUのエネルギー・気候に関する目標に沿った新規設備投資を損なうことなく、投資および運営コストをまかなうことが可能になる。上限を超える収入は加盟各国政府が徴収し、エネルギー消費者の料金削減策に使用される。電力を取引する加盟国は、連帯の精神に基づき、発電国が徴収するマージナル電源を利用しない事業者の収入の一部を、発電量の少ない加盟国の最終消費者に分け与えられるよう、二国間協定を締結することが奨励される。このような協定は、当該加盟国の近隣国からの電力の純輸入量が100%以上である場合、2022年12月1日までに締結されるべきである。

第3に、欧州委員会はまた、上記のインフラマージナル事業者に対する収入上限が適用されない、石油、ガス、石炭および精製部門における活動から生じる過剰な利益に対し、一時的な連帯拠出を行うことも提案している。この期限付きの拠出金は、グリーンな移行に向けた投資を維持する動機づけとなる。この負担金は、2022年の利益のうち、過去3年間の平均利益の20%より高い部分に対し、加盟各国が徴収することになる。この連帯金は加盟国が徴収し、エネルギー消費者、特に困窮している家庭、困難な状況にある企業およびエネルギー集約型産業に振り分けられる。加盟各国はまた、欧州のエネルギー体制の変革を図る「REPowerEU計画」の目標に沿った国境を越えたプロジェクトに資金を提供したり、収益の一部を雇用保護や再生可能エネルギーやエネルギー効率への投資促進のための資金に充てることも可能だ。

電力市場を司るルールへのさらなる介入策として、欧州委員会は、消費者を支援するために利用できる「エネルギー価格ツールボックス」の拡大も提案した。これにより、初めて原価割れの規制電気価格の設定が可能になり、規制価格の適用が中小企業にも拡大される。

原文はこちらをご覧ください(英語)。

 

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