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2030年以降の野心的な気候目標へ向け、日欧政策担当者・専門家が「日・EUグリーンアライアンス」会合

駐日欧州連合(EU)代表部と日・EUグリーンアライアンス・ファシリティは925日午後、同代表部(東京都港区南麻布4丁目)にて、「野心的な2030年以降の気候目標(次期NDC)の設定に向けて」と題したイベントを開催した。150名以上が参加したこのイベントでは、20252月までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出される予定である、1.5℃目標に沿いかつ昨年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)でのグローバル・ストックテイクの結果を反映した次期「国別貢献(Nationally Determined ContributionNDC)」の策定が議論された。

 

欧州委員会、日本政府各省庁、主要ステークホルダーの代表を含む「日・EUグリーンアライアンス」のパートナーらが一堂に会し、野心的な気候目標の実現に向けた知見と見通しを共有し、日本と欧州のグリーントランスフォーメーション(GX)を巡って対話と協力の可能性を探った。

冒頭、参加者を歓迎して、トーマス・ニョッキEU代表部副代表・公使があいさつ。グリーンアライアンスの重要性を強調し、「気候危機は予想以上のスピードで深刻化しており、地球を守る唯一の方法は世界的に温室効果ガス(GHG)の排出を大幅に削減することだ。次の重要なステップは、2030年以降の野心と方向性を定めることにある」と述べた。さらにニョッキ氏は、「厳しい地政学的状況やグリーンかつ気候中立な移行において、産業競争力、雇用創出、公正な分配を同時に確保する必要性など、日・EUは課題を共有しており、今後の気候中立への道筋を描くにあたり、グリーンアライアンスは今後一層大切になると強く確信している」と表明。これに対し、日本の外務省国際協力局気候変動課の松井宏樹課長はアライアンスの発展を歓迎し、 「日・EU合わせて、世界のエネルギー起源CO2排出量の約10%を占めているため、双方が気候変動対策に意欲的に取り組み、世界の気候行動をリードしていくことが大切だ」と指摘しした。

日本政府関係者と気候政策の連携について話し合うため今回東京を訪問している、欧州委員会気候行動総局(DG CLIMA)国際炭素価格市場タスクフォースメンバーのマヤアレクサンドラ・ディッテル氏は、2030年気候目標および2030年以降のNDCに向けた準備に関するEUの進捗状況について説明した。ディッテル氏は、欧州委員会がEU2040年の気候目標として、1990年比でGHG排出量を90%削減するよう勧告しており、加盟国間で合意されれば、この目標がEUの次期NDCの基礎となると述べた。また、EU2030年以降、エネルギー部門の完全な脱炭素化、特にクリーン技術部門における産業競争力の強化、排出削減が困難な部門を対象とした炭素回収・貯留技術の推進に注力、またカーボンニュートラルへの移行がもたらす社会的影響に対応し、誰一人取り残さないように努力するとした。また、日本の環境省と経済産業省から、2030年目標に向けた日本の進捗状況(2030年度までに2013年度比で46%削減)とGX政策の展開について説明がなされた。 

続いて行われたパネルディスカッションでは、EU加盟国および日本の多様なステークホルダーグループから著名な専門家が参加し、パリ協定が定める1.5℃目標の実現に向けた野心を高めるための見解を述べた。ドイツ連邦共和国大使館のペーター・レッフェルハルト経済・科学技術部長は、カーボンニュートラルに向けたドイツの取り組みを紹介し、「ドイツにおけるエネルギー転換は、CO2排出量の削減、エネルギー安全保障の確保、経済的繁栄の実現の3側面すべてにメリットをもたらしている」と説明した。元国際エネルギー機関(IEA)事務局長で、現Innovation for Cool Earth Forum (ICEF) 運営委員会議長の田中伸男氏は、ネットゼロ・ロードマップに関する国際的な進展を踏まえ、 「日本の産業界が脱炭素化に向けてより早く前進するためには、エネルギー転換への大胆かつ明確な国家目標が必要である」と話した。東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、日本のエネルギー基本計画の改定と次期NDCの策定状況について説明し、「70%以上を輸入化石燃料に依存している現在のエネルギーシステムが将来にわたって持続可能かどうかを再考する時期に来ている」と述べた。一般社団法人Climate Integrateの平田仁子代表理事は、気候変動に関するアドボカシーに数十年携わってきた第一人者として、 「技術、資金、人材を持つ日本が世界をリードする役割を担うべきだ。石炭火力発電が日本の総発電量の30%以上を占め、脱石炭の議論が始まってもいないことを憂慮している」とした。サントリーホールディングス株式会社サステナビリティ推進本部の内田雄作部長は、日本の産業界の脱炭素への取り組みを振り返り、「事業活動では、長期的に成果を生み出すために、事前に十分な計画を立てる必要がある。グローバルに求められている明確な目標を見定め、それに沿った取り組みを計画・実行することが重要だ」と述べた。また、若者を代表して、日本若者協議会キャンペーナーの中村涼夏氏は「1.5℃目標を達成するために、世界は行動を加速させる必要がある。私たちはまだ若く、選挙に立候補することはできないので、意思決定の場に別途若者の声を反映する機会がほしい」と訴えた。

パネリストは異なる立場を超え、気候変動への取り組みの緊急性、各国政府が野心的な次期NDCを設定し実施する必要性、解決策の開発と普及を加速させるための日・EU間の協力強化の必要性を共有した。

 

注記:

日・EUグリーンアライアンスについて

2021527日に開催された第27回日・EU定期首脳協議で、気候変動、環境悪化、生物多様性の損失に共同で対処するため、日・EUグリーンアライアンスが調印されました。EUと日本はともに、パリ協定を推進しながら、気候中立でレジリエンス、資源効率の高い経済を発展させることを目指しています。2021年以降、エネルギー転換、環境保護、ビジネスと貿易、研究開発、持続可能な金融、第三国への支援、グローバルな気候変動対策、気候戦略、都市の脱炭素化、市民社会のエンパワーメントなどの領域で協力を図っています。

日・EUグリーンアライアンス・ファシリティについて

日・EUグリーンアライアンス・ファシリティは、同アライアンスの様々な活動の計画・実施を支援するため、20246月にEUの支援により設立されました。同ファシリティは、adelphi(ドイツ)、AETS(フランス)、地球環境戦略研究機関(IGES)のコンソーシアムによって運営され、プロジェクトチームのリーダーを待場智雄(ゼロボード総研)が務めています。